立体感が出せないという時、思い出して欲しいことがあります。
それは「面で見る」ということです。
「面で見る」というのは、デッサン特有の見かたなのですが、滑らかな曲線を大まかな形の変わり目ごとに区切り「面」に見立ててあるものです。
複雑な形であっても、このような面の方向性と変化があります。
独特な考え方でもあるので、慣れないと「んんん?」と感じるかも知れませんが、この見方ができるようになると、立体感が掴みやすく、鉛筆を運ぶ方向も解ってきますので、知っておくと便利です。
平面の紙の上に立体を表現するって、やはり慣れないと難しいんですよね。。。
「面」を観察するポイントとしては、「面」=「形の変わり目」でもありますので、目を細めて対象を見てみてください。
目を細めてみると、細かいところが省けて「明るいところ」「暗いところ」と、大きなトーン(明暗)の流れが確認しやすくなります。
また、アウトラインだけでなく、面の大きさや形を基に、形を判断できる場合もあります。
早い段階でこの作業を一度取り入れて、大きく形を見ながら、徐々に細かい部分の描き込みに入っていくと、形の修正もしやすく、
立体感を崩さずに完成させることができるようになります。
それから面取りの練習用に石膏像があるのをご存知でしょうか?
絵画教室などで「デッサンを学ぶ」というと、一度は登場するのが真っ白な石膏で作られた「幾何学形体」や「面取り像」です。
面取り用の石膏像では「アグリッパ」という男性の像が有名ですが、機会があれば一度描いてみてください。
※「アグリッパ」の画像につきましては、石膏像ドットコム(堀石膏制作)様の画像を参考資料として使用させていただきました。
これは、人物の形を大きな面に見立てて作られた石膏像で、多面体の幾何学形体が複雑になったものと考えることが出来ます。
初心者の方は「立方体や直方体→幾何学形体→面取り像」というように難易度を上げながら順に取り組むと「面」についての理解がしやすいと思います。
それから「面」がどういう方向で在るのかを理解しておくと、立体の構造が把握出来るので、どの方向に鉛筆を動かせば立体を描き起こせるのかを、考えやすくなります。
更に、形自体を観ることができると、光のトーン(明暗)の移り変わりにも惑わされなくて済むようになります。
どういうことかと言うと、明暗の色の違いだけでモノを見ていると、形の構造への意識が薄くなりがちです。
光の方向や強さは、時と場所によって変化することがあります。
場合によっては、午前と午後、朝と夜で、刻々と移り変わります。
しかし、そこに「在る形」自体は、変化しないのです。
そうなると、そのモノ自体の形を捉えることがやはり重要なのです。
形を認識するきっかけとして、明暗を活用し、面の変わり目を把握すると言うとわかりやすいでしょうか?
それから実際に描く時には、明暗だけでなく「明・中・暗」と3段階くらいに分けて移り変わりを見るようにしてみてください。
細部の描き込みに入ると、どうしても部分ごとの細かい単位の明暗で見てしまいがちですが、時折、画面から離れるなどして自分のデッサンを客観的に観るようにしましょう。
その時に、かならず大きな面での「明・中・暗」が区別出来ているかを確認します。
部分的に見ると「明るいな」と感じるところでも、全体の中で見た時にはどのくらいの明るさなのか?を見極めます。
そうやって、バランスを取りながら完成まで持って行かれると良いですね。
立体の出し方は、1つではなく様々な要素が絡み合って解決できるものでもあるので、これが全てではありません。
しかし「面」で考えることができるようになると、モノの観察の仕方がガラリと変わり、今まで悩んでいた事柄が、いろいろ解決するかも知れません。
何事も、渦中にいる時には気がつけないものですが、少し視点を変えてみることで、新しい世界が見えてきます。
皆さんのデッサンがより良くなるヒントとなれば嬉しいです!