松原美那子
今回は、石膏像について書いてみようと思います。
石膏像というと、学校の美術室や、西洋の美術館のイメージでしょうか??
石膏像というと、学校の美術室や、西洋の美術館のイメージでしょうか??
受講生
そうですね。学校の美術室に置いてあったのを良く覚えています。
描くとなると難しそうです〜
描くとなると難しそうです〜
松原美那子
石膏像は日常であまり見かける事もないので、描く機会も少ないかと思いますが、「真っ白い人体のモチーフ」とても勉強になるので、一度くらいはチャレンジしてみると良いですよ。
この記事の目次
石膏像とは
松原美那子
もともと石膏像は、古代彫刻やルネサンス彫刻などの複製に用いられていたもので、古代彫刻の発掘が進んだルネサンス期以降に本格的になったと言われています。
スケッチ
真っ白けっけで、描くのが難しそうなんだニャン。。。
今日のように図版や映像で美術品を簡単に閲覧できない時代、石膏像はデッサンや考古学の資料として、また美術館の展示物として重要な役割を果たしていました。
かつては、西洋美術の価値基準となっている黄金比率を学ぶための教材として、大抵の美術大学の入学試験に出題されていたため、美大受験というと石膏像のデッサンを練習するイメージを持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際に私も芸大受験に向けて、勉強を積んでいた頃があります。
なかなか顔が似なくて苦労した覚えがあります(笑)
松原美那子
しかし、石膏像を描くことで勉強になることがたくさんありました。
例えば、石膏像は真っ白いモチーフなので、白い紙に黒い鉛筆で描けば描くほど黒くなっていきます。
黒くなるのが怖くて、なかなか描き込みができなかったり、逆に描きすぎて「真っ黒な石膏だね」と言われている人もいたり、なかなか個性が出てくるモチーフでもあります。
真っ白だけどそこに形は存在するわけで。
ですから、明暗を使わずに「白いモノを白く描くにはどうしたら良いのか?」をすごく考えました。
白い物が描ければなんでも描ける。と、言われたほどある意味難易度の高いモチーフでもあります。
美大受験に必要なほど、極める必要はありませんが、チャンスがあれば一度くらいは描いてみると、楽しいと思います♪
石膏像の添削アドバイス
松原美那子
今回石膏像に挑戦していただいた受講生がいますので、添削アドバイスと合わせてご紹介させていただきます。
受講生情報
【ニックネーム】 MSさん
【添削回数】 5回目
【制作時間】 約10時間
【描く力を身につける目的】 記憶と想像だけでデフォルメされた人物(漫画)を短時間で描けるようになること。
【気をつけたこと】 前回、および前々回で指摘された内容
・輪郭線を描かない
・明暗を3段階以上で表現する
・明暗を2つ以上のパターンで表現する
・光源を意識する
・明暗の明の形を正確に取る
・消しゴムの使い方に注意する
・スケッチブックに描くこれらを意識して描きましたが、まだ画力が形を取る段階で四苦八苦するレベルなので、すべてを実践できませんでした。よろしくお願いします。
【添削回数】 5回目
【制作時間】 約10時間
【描く力を身につける目的】 記憶と想像だけでデフォルメされた人物(漫画)を短時間で描けるようになること。
【気をつけたこと】 前回、および前々回で指摘された内容
・輪郭線を描かない
・明暗を3段階以上で表現する
・明暗を2つ以上のパターンで表現する
・光源を意識する
・明暗の明の形を正確に取る
・消しゴムの使い方に注意する
・スケッチブックに描くこれらを意識して描きましたが、まだ画力が形を取る段階で四苦八苦するレベルなので、すべてを実践できませんでした。よろしくお願いします。
このように、注意点を自分で書きだして、意識しながら描いているのはとても良いですね!
慣れてくると、ひとつひとつに意識を向けなくても、無意識のレベルで出来るようになるものもありますが、はじめのうちはこのように気をつけながら繰り返し練習していくと良いですね^^
松原美那子
今回の添削担当は小椋講師です。それでは一緒に見ていきましょう!
講師からの添削内容
こんにちは!ピリカアートスクールの小椋と申します。
よろしくお願いします!^^
よろしくお願いします!^^
MSさんの作品を拝見させて頂きました。今回は5回目の投稿、石膏に挑戦ですね。
以前の作品よりグラデーションが増して、雰囲気のいいデッサンになってきましたね。
【描く力を身につける目的】は「記憶と想像だけでデフォルメされた人物(漫画)を短時間で描けるようになること。」なのですね。
このようにデッサン をやっていくと、描き足す作業と描き省く作業がわかってきますし、自在に表現するための描写技術も身につきます。ですので、必ず目標に近づけると思います。
気をつけたこともこれまでの添削を参考にしていただいてありがとうございます。
これだけの事を意識して描くのも大変だったかと思いますがそのうちに手が自然と動くようになるので今後も続けていってくださいね。
これだけの事を意識して描くのも大変だったかと思いますがそのうちに手が自然と動くようになるので今後も続けていってくださいね。
では形の取り方や石膏の特徴などにも焦点をあて、MSさんの絵が更に良くなるよう、アドバイスさせて頂きます。
さて今回はMSさんも少しずつ慣れて来たことから更に細かく「デッサン」についてみていきましょう。
これはほかの方にも言っていることなのですが、デッサンというのは、「絵」でそれが何か?
どういう状態か? を伝える作業です。
例えば『丸っぽいけどベース断面は5角形で出来ていて下が上より細くて赤く、上に茎の様なものがあって。。。』等を「絵」で説明し、見ている人に「あ、リンゴだ」とわかってもらう作業です。
上記の様にまず大きな特徴を掴んで(知って)絵で説明しないと全く別のものに見えてしまいます。
人物や石膏の場合は細かい「動き」が加味される場合が多いのでより観察が必要となります。
人物や石膏の場合は細かい「動き」が加味される場合が多いのでより観察が必要となります。
今回の様な石膏像の場合は「人間の美を追求した完璧な形」と言われ、ある意味私たちの顔とはパーツの大きさや凹凸などちがう部分も多いのですが、私達は普段人間の顔をよくみているのでリンゴや瓶の様な静物よりも1mm単位の間違いが判断しやすいのです。
様は微妙に眼の大きさや眼のくぼみの量、髪のボリュームが違うだけで違和感を感じてしまうのです。
また、「なぜ石膏像を描くのか?」を問われると
- 「人物の理想的な形」なので骨格などがわかりやすい
- 人物画と違って動かないので形の把握がしやすい
- 真っ白なので細かいグラデーションを要求される(グラデーションの練習になる)
- 真っ白なので面で捉えやすい
- 細かすぎるデティールがないので塊で捉える練習ができる。
などなど色々利点があります。
石膏を描くときにこれらを全て習得しようとすると、かなりの時間がかかりますので、今回は面とグラデーションについて更に学んでいきましょう。
「面と大きな光と陰」について
まずはじめに「面を取る」とは大まかな形の動きを線で表すことです。
こういうと少し難しいのですが、要は紙上で直線で物体を削る様にやれば言い訳です。
<資料1>を見てみましょう。
このように、発泡スチロールの固まりから球を削り出す方法を想像して下さい。
刃物で直に球面を削り出すことはできまません。
削るとその部分は平面になります。
陵(境目の線)ができますから、その陵をまた削るということを繰り返してどんどん細かくして行けば球面を作ることができます。
画面上で、これと同じことをやればいいのです。
画面上で、これと同じことをやればいいのです。
はじめに曲面を、面取りする訳です。
稜線が見えますが、これは面と面のぶつかった「変わり目」であって、線があるのではないと考えるのです。
この辺が、私達東洋人にとって感覚的に難しい所なのですが、デッサンは、明らかに西洋の描き方です。ですから学ぶ必要があるのです。
こちらはミロのビーナスの面取りのものです。
受験などで、初心者はまず右の像を描き「面」を習得します。
ただ今回のようなモチーフでもこれらを意識すればだんだんと「面」が意識できるようになります。
まずこの大きな面に陰影をつけた後に細かいグラデーションを描いたり抜いたり(消したり)する作業を始めます。
今回のMSさんの作品でいえば<資料2>のようにまず大きな明暗を出すところから始ります。
こちらはミロのビーナスの面取りのものです。
受験などで、初心者はまず右の像を描き「面」を習得します。
ただ今回のようなモチーフでもこれらを意識すればだんだんと「面」が意識できるようになります。
まずこの大きな面に陰影をつけた後に細かいグラデーションを描いたり抜いたり(消したり)する作業を始めます。
今回のMSさんの作品でいえば<資料2>のようにまず大きな明暗を出すところから始ります。
グラデーションについて
今回はかなりグラデーション幅が出て来たので、絵に深みが増して来ていますね。
ただ今のMSさんの画力ではもっと細かくみていけそうです。
ただ今のMSさんの画力ではもっと細かくみていけそうです。
なぜなら「石膏像モチーフ」は上記で記したように「真っ白なので細かいグラデーションを要求される(グラデーションの練習になる)」からなのです。
次の段階では、グラデーションスケールを一度作ってみる事をオススメいたします。
色幅がなかなか出せないという方には、こちらの記事をご紹介しています。
参考にしていただければと思います。
グレースケールの作り方・活用の仕方は、こちらをご覧くださいませ。
もっと描いたところを手や布、さっ筆などで押えてなじませ、又鉛筆をのせて、
練り消しでとっての繰り返しの作業を加え、奥行きや質感を作って行きましょう。
特に鉛筆で描いたところを押えてなじませるのは石膏の奥行きを作ったり質感を作るのに役立ちます。
形について
資料3を見ましょう。
今回はかなりいい感じに形が取れていますが、胴の横幅が足りていないことでかなり細くて見えてしまっています。
以前に形の取り方をお話ししたかと思うのですが、もし形のことで難しいなーと思うなら、測り棒の他にデスケールという測る道具もあります。
最終的には測り棒や鉛筆で自分で測れるのがいいですが、デスケールを試してみても、一つの見方の練習になるのでいいかもしれません。
(ただしデスケルは肘を曲げて測ることが多くなるのでより慎重に)
また石膏や人物の場合はまず自分で同じ動きをしてみると「ここの腰がひねってる」とか「首がこんなに傾いてる」がわかりやすいので実践して見てくださいね^_^
構図や照明について
前回は小さな画用紙でしたが、今回はスケッチブックに描いていただいたので鉛筆の線も見やすくなっていますね。
構図的にはもっと大きく描いていいですよ。
画面いっぱいに描くと手が大きく動き線がより洗練されて来ます。
また、描くときは「手首」を動かすのでなく「肩から動かす」と線がブレません。
これは卓球とかテニスの動きますをイメージしてもらうとわかると思います。
それから、今回は、写真画像を元に描いていますが、実際に石膏像をみながら描くことが出来る場合は、光の方向にも気を配ってみてください。
一般的には自然光が一番綺麗だと言われていますが、毎回条件の良い場所で描けるとは限りません。
また、昼まであれば良いですが、夜だと自然光では描けませんね。
それから、自然光の場合も太陽の角度によって、光の方向も変わります。
すると影の付き方も変化してくるので、初心者の方はそれだけで混乱してしまう場合があります。
ですので、安定的にモチーフの陰影をしっかり出す道具として、照明器具を用意しておくと便利です。
照明を当てる場合には、位置方向からの光に絞る事ができると、明暗がはっきりし、一番描きやすいと思います。
その他、教室などで描かれている場合には蛍光灯を使っている事も多いかと思いますが、その際には多少自分の中で光の方向性を整理して見極めてから描くようにすると、混乱せずに済みますね。
添削のまとめと、ひとこと
ちなみに、受験用の練習の時は「石膏」を始めに描いたりするのですが、大体の生徒さんが「自分の顔、もしくは知り合いの顔になんだか雰囲気が似てしまう。。」という現象が起きます。
人間の頭は「人間」という自分の過去の記憶をたどって描いている絵を調整しようとします。
このように「同じ顔になってしまう」というのも理屈があるのです。
また漫画やアニメを描き慣れているけれどもデッサンに慣れていない人が描いた絵もどこか「漫画風」「アニメ風」になりがちです。
こちらも「脳」が「これが人間っぽい」と認識してしまっているから起こる現象です。
描いていくと自分の癖や人間そのものの癖がわかるのもデッサンの面白いことの一つです。^ー^
MSさんの作品の線は良い感じになってきているので、今後もどんどん描いていってください。
上達のスピードとしてはとてもいいと思います。
ではMSさんの次回の作品も期待しております。宜しくお願いします。
松原美那子
小椋講師の添削をご覧いただきましたが、いかがだったでしょうか?
石膏デッサン、あまり必要ないかなと思う方でも、真っ白いモチーフを描くと、いろいろ気づきがありますよ。
一度くらいは是非チャレンジしてみてくださいね!
石膏デッサン、あまり必要ないかなと思う方でも、真っ白いモチーフを描くと、いろいろ気づきがありますよ。
一度くらいは是非チャレンジしてみてくださいね!