江戸時代の浮世絵師、歌川広重作の『名所江戸百景大はしあたけの夕立』
とタイトルを聞いて、作品を思い浮かべることができる人は、どのくらいいるでしょうか?
画面の下に大橋が掛かり、その橋の上を傘をさしながら行き来する人々。
空からはザアザアと降り注ぐ雨。
江戸の雨の情景を描いた作品ですが、印象派の画家として有名なゴッホが模写したことでもよく知られています。
多分、画像を見れば「あぁこれか!」となると思います。
歌川広重は、当時世界ではじめて「雨を線で表現した人物」としても知られていますが、この頃、西洋では雨を描く際には、傘やレインコートを用いることで雨を表現しており、「雨を線で」描いて表現するという発想は 広重が最初だったのです。
そして、今の私たちが雨を描こうとすれば、同じく線を使って描くのではないでしょうか。
例えば、雨に関する絵本は沢山ありますが、「雨」がどんな風に描かれているかを見ていくと、線を使って雨を表現している作品は沢山あります。
しかし、そこに疑問を持つ人はどのくらいいるでしょうか?
何が言いたいかというと、「一度身につけた視点は、 なかなか変わらない」ということです。
しかし逆に、ちょっとしたことに気がつくだけで、世界が変わる!という体験ができると言うことでもあります。
当然ではありますが、人によって、
「気がついているところ」
「気が付かないところ」
それぞれ見えている世界が違うわけで、自分では当たり前と思って会話をしていても、「あれ?なんか食い違っているな?」ということが日常の中でも頻繁に起きているということなんです。
絵を描くときも、 一部分だけを見ていると気がつけないことがたくさんあります。
何かに集中していると、周りが見えなくなったり、周りの音が聞こえなくなることってありませんか?
同じように、絵を描いていても、一点に集中して描いていると、画面全体のバランスを見失うということがあります。
敢えて「バランスを崩す」ということはあっても良いと思うのですが、
「バランスを見失う」と後から何かと大変です・・・。
例えば、人物画を描く時であれば、顔だけ一生懸命に似せようと頑張って描いていたのに、いざ、全身のバランスをみてみたら、頭部の大きさが体に対して異様に小さかった・・・という場合 ・・・
せっかく描いたのに、一旦消してから、再び描き直さなくてはならなくなってしまいます・・・。
「常に全体をみていたら・・・」
「もっと早い段階で気がつけたら・・・」
描き直しにかかる時間も労力もかなり制限できましたよね。
絵を描くことは、フラットな視点で 物事を見られるように訓練する練習になるなーと思います。
そして、自分の中での違和感を見逃さずに疑問を持ち続けること。
違いや差、違和感を感じるということは、新たな視点を手に入れる為に、 必要なことなのです。
雨の話に戻りますが、広重が活躍した江戸時代。
今のようにインターネットがない時代に違う国の違う文化を持った画家たちが広重の雨の絵をみた時の驚きは、よほどのものだった気がします。
「あぁ!こういう視点があったのか!」と。
自分の中に新しい発見があると、ワクワクしますね。
知らなかったことに気がつくこと。
これが学びの原点のような気がします。
まだまだ、まだまだ、私も修行中ですが、絵を描きながら、自分の見方の癖やパターンを振り返ってみるというのも良いですね♪
結構楽しいですよ( ^ω^ )