リンゴを描いてみませんか?
じゃあ、リンゴを描いてみましょうか(笑)
簡単そうに見えて、描いてみると案外難しかったのではないでしょうか。
思ったより難しかったです。
では、なぜリンゴを練習するのでしょうか?
なぜリンゴをデッサンするのか?
リンゴをデッサンすることで、なぜ人物画がうまくなるのか?
そんなお話をしてみたいと思います。
では、リンゴの描き方をお伝えしましょう^^
りんごを描くと人物画もうまくなる
私の受講生の中でも「人物画」を描きたい人が多いです。
そこで、いきなり人物を描くよりも、前段階としてリンゴを描いてみてください。
リンゴというのは、全体の形は球体に近い形でありながら、上下部分はよく見てみるとかなり凸凹しています。
人物も、頭部の形は球体に近い形と考えられます。そこに、目・鼻・口といったパーツが付いているというイメージです。
そうなんです。リンゴと人物の頭部の描きかたには共通点があるのです!
リンゴを描くときに学ぶ凹凸の描き方が分かると、人物画の目鼻口の細かい凹凸が描けるようになるのです。
なぜリンゴをデッサンするのか?
なぜ、デッサンでは、リンゴを描くのでしょうか?
主に、このような理由から、デッサンではリンゴをモチーフに使われることが多いと考えられます。
では、1つ1つ解説していきましょう。
誰もが知っているモノで手に入りやすい
リンゴを知らない人って、まず居ませんよね?
ほとんどの人が、食べたことがあるし、味もわかる。外見が赤だけど、中身が白い。切るとどんな風になっているのか?
みんなが知っているということです。
また、近所のスーパー、八百屋、コンビニなどでも最近では年間を通していつでも手に入れることができますね。
形がシンプルで綺麗
また、色も綺麗。
巨匠と言われる画家など、みんなが描いてる
みんなが描いている。
「リンゴひとつでパリを驚かせてみせる」
(「リンゴとオレンジ」 1895~1890年 オルセー美術館蔵)
それから、ピカソもリンゴを描いています。
(水差しとりんごのある静物 1919年)
(キュビズムで描かれたりんご(中央))
ルネマグリットのリンゴも有名ですね。
(「美しい世界」1962年)
(「これはリンゴではない」1964年)
これだけ、見た限りでもそれぞれ個性的な表現が魅力的ですね!
幾つか並べて描いてみると、より違いを観察しやすいですね。
りんごの描き方のセオリー
しかし、ある程度セオリーとされる手順を知っておくと、描きやすいと思います。
モチーフの選び方
その他の選ぶポイントとしては、基本的には「描いてみたい」と思った、色や形のモノを選んで頂けば良いと思います。
モチーフは、何かしら思い入れや拘りがあるものを選んだ方が「その魅力を伝えよう」とする気持ちが働くので、表現ポイントが定めやすいです。
また、手にとって、りんごの形をよく見てみましょう。上から見るとどんな形でしょう?
横から見るとどんな形でしょう?下から見るとどんな形でしょう?どこかに傷はありますか?
どこがでっぱっていて、ひっこんでいるか?
いびつな部分はあるか?
果物や野菜などの自然物は、2つとして同じものが存在しないので、そのものの基本的な特徴をよくつかんで、そこが絵にあらわれるように描くことが大事なのです。
そして、自分が「これだ!」と思ったモノを選んでみてくださいね。
よく見たら、今度は、実際に触ってみたり、香りも感じてみましょう。
人間の五感を最大限に使って、モチーフを感じてみましょう。
そして、モチーフの基本的な構造や特徴を観察し、よく理解してから絵にすることをイメージしましょう。
「何となく」選ぶよりも、「これがいい!」と思って選ぶことを考えてみるといいですね^^
モチーフとしての<置き方>
よし描くぞ~!
リンゴの置き方も結構大事なんです^^
どこから見た形が一番好きですか?
どこから見ても同じじゃないですか?
そんなに違うもんなのですか?
それから「ヘタ」の見え方もポイントです。
どちらの方向を向いているのかで、描きやすさも変わってきます。
一般的には、左右どちらかに向いてヘタがある方が「りんごらしく」見えると思います。
描きやすい位置は?
モチーフを見る視点についても考えてみてください。
接地面が見えるように置きましょう
テーブルとの接地部分をある程度きちんと見せることで、安定感を感じられる絵になります。
<横から見た図>の通り、球体は「点」で床に接地するので、左の図は不自然に見えます。
真ん中の図は、斜め上から見下ろしている構図ですが、接地点は見えていないものの、接地点を意識して、強調した表現ができているのです。
次に、立方体の接地面についても見てみましょう。
立方体は、球体と違い、台に対して「面」で接地します。ですので「接地面」となります。
左の図と、真ん中の図の違いは、接地面が強調されているかどうかという点なのですが、台との境目をどのくらいきちんと描き込むかどうかで、上に置かれているモノの重さも感じ方が変わってきます。
因みに、真ん中の図の方が、接地面が強調されている事から、立方体の重みが感じられます。
リンゴの場合、おおよそ球体をイメージしてもらえれば良いのですが、細かく考えるとテーブルとの接地部分が一点ではないため、立方体の要素も含まれます。
いずれにせよ、初心者の方は、ある程度テーブルとの接地部分が見える位置を選ぶと良いですね。
リンゴの特徴がわかるように置きましょう
モチーフを置いてみた時に、特徴がわかるように置くのがコツです。特徴が隠れてしまっては、意味がありません。
りんごのごつごつした感じ、ごろんとした感じを出すために、斜め上から見るのが描きやすいでしょう。
へたの部分、柄とくぼみの部分はりんごを描くときの描きどころ、絵の見せどころとなりますので、そこが見える構図にします。
真横からは、立体感をつかみにくい
ななめ上からは、りんごのカタチをつかみやすい自然な角度
背景までを考える
リンゴの色が映えるように、白色であれば一番描きやすいと思います。
例えば、実際の背景に棚が見えていたとします。
すると、後ろの棚がごちゃごちゃして、リンゴのアウトライン(稜線との境目)が、どのように見えるのかが判断しにくいのです。
また、背景の色が影響して見えるので、真っ白な背景の紙の上にリンゴを同じように描いても、条件が異なるため、見え方が一緒ではありません。
光の設定
初心者の方は、位置方向からの光が描きやすいと思います。
また、自然光が一番綺麗に見えると言われていますが、時間をかけて描く場合、太陽の位置が時間とともに変わってきてしまいます。
初心者の方が自然光で描く場合には、初めに写真を一枚取っておくと、後から確認ができて良いかも知れませんね。
構図について
構図次第で、まったく伝わり方が違ってしまいますからね。
紙に描く際に、モチーフをどの位置に配置するのか、またどの位置が綺麗に見えるのかなどの、見せ方のことを「構図」と言います。
構図はその時々モチーフによっても変わって来るのですが、単体のモノを描く時には、モチーフが紙の中央、もしくは真ん中よりやや下にくるように描くと、モチーフが安定する構図になります。
それから、デッサンではテーブルやテーブルにできる影の様子も描くので、その分のスペースも初めの段階で忘れずに確保するようにしてください。
初めの段階で配置を考えて置かないと、後から構図のバランスが悪くなってしまう可能性があります。
画面の下に描いてしまうと、手前の空間が小さくなり安定感がでない。
モチーフのりんごとテーブルの影の位置も考えて配置する
それから、大きさは実物よりもやや大きめに描きましょう。
実物大に描いてしまうと、小さく貧弱に見えてしまいます。しかし、大きく描きすぎると不自然に見えるので、実物よりも、110~120%くらいが最適です。
小さいと貧弱
実物より大きすぎると不自然で描きこみがしづらくなる。
実物より少し大きいくらいが自然
デジタルで描く場合、構図の変更は後から簡単にできてしまいますが、アナログの場合、後から修正するには、描いたモノを消さなくてはならないので、とても労力がかかります。その分、一度で失敗なく決めたいという気持ちから、緊張感を持って取り組むことができるのは、メリットとも言えますね。
紙と鉛筆でデッサンをしたことがないという方は、是非、アナログとデジタルの両方を試してみてください。
以下の記事も参考になると思います。
⇒「デジタル」と「アナログ」デッサンを描く上での表現の違いとは?
しかし、初心者の方は絵がより良く見える&描きやすい、重要なコツでもありますので、忘れずに確認するようにしてくださいね♪
複数のモチーフの構図について
複数のモチーフの場合の「構図」についてお話ししたいと思います。
とても奥の深い内容なので、全てをお伝えすることは出来ませんが、ビジネスデッサンという視点から、いくつか知っていると便利な内容をお伝えしようと思います。
まず、構図には「正しい」、「正しくない」という判断はありません。敢えて言うならば、「見やすいかどうか」という事は気にしながら決めると良いかなと思います。
では、どういったものが見やすいのか?
「正しい」「絶対」という解釈の構図はないと思ってください。
これも、描く側の意図が伝わるかどうかでかなり変わってくるのですが、絵画ではなく、ビジネスデッサンとして必要な部分で考えると、「位置関係」「位置情報」というものがとても重要視されると思います。
1つのものを描く場合、単体のモノの情報を伝える手段としてのデッサンであれば、位置関係はあまり考えなくても良いかもしれません。
しかし、2つ以上のモチーフになった瞬間に、「どちらが手前でどちらが奥にあるのか?」、「それぞれの距離はどのくらい離れているのか?」など、単独では必要なかった両者の「関係性」について考える必要が出てくるのです。
基本的には、必要な情報が、スッキリと見やすく描かれていることが一番大切だと思います。
構図のテーマを考える
どちらかというと、絵画表現の際に必要とされる考え方かも知れませんが、構図の違いが生み出す、イメージの違いについてお伝えします。
以下に、柿の構図を2種類用意しました。テーマを“元気”にしたとします。
あなたはどちらの構図がより“元気”を表す表現に適していると感じますか?
多くの方が、左の大きく配置された柿を選ぶのではないでしょうか。
では、次にテーマを“静寂”にしたとします。あなたはどちらの構図がより“静寂”を表す表現に適していると感じますか?
今度は、多くの方が、右の小さく配置された柿を選ぶのではないでしょうか。
このように、右と左の構図のどちらが「良い悪い」という定義はないのです。
あなたが表現したいテーマに構図が沿っているのか?という視点で表現すればよいのです。
では、複数のモチーフでお話しします。
下に3つのカステラのある構図が2種類あります。
どちらも良い、悪いはありません。何を感じるかということです。
私は、左側の構図であれば、整然と並んでいる様子から、「規律」、「正しい」とか、「仲間」、などといったテーマを感じます。
右の構図であれば、2つと1つに分かれている様子から、「個性」、「独立」「仲間はずれ」などといったテーマを感じます。
以上のように、複数のモチーフを配置する場合は、大きさの時と同じように、あなたが何を表現したいのか?
を考えて、構図をとると良いと思います。
ここまで考えたことありませんでした。。
比率を測って輪郭(アウトライン)を描く
「ようやくか〜!」という感じですね(笑)
ここまで長かったです(笑)
りんごの大きさの目安となる「アタリ」をとります。
大まかにすぐ消して修正できるくらいの柔らかい線で形をとることを「アタリをとる」といいます。鉛筆は寝かせた状態で軽く持ちます。りんごの大きさを見ると同時に、どこに配置するのか、構図も考えます。
少し補足になりますが、アウトラインを描く時には「アタリ線」を使います。
「アタリ線」とは、鉛筆を寝かせて芯の腹で、あまり筆圧をかけずに描く線のことです。
練りゴムで消せば、後も残らず簡単に消せるくらいの柔らかい線です。
「こんな感じかな〜」と、試し描きするようなイメージで描いてみてください。
大まかな「アタリ」がとれたら、りんごの特徴となる、ヘタの部分の位置を決めます。
この段階でも、修正した方が良い部分を見つけたら、どんどん修正していきます。
まだ描き込みはせず、やわらかい線で軽く描いて行きます。
次にりんごの陰影を付けていきます。りんご自体の暗く見える部分と、床に出来た影の部分の両方を見てゆきます。
全体の大きさ・構図がほぼ決まったら、描き込みに入ります。
ここまでが、しっかり出来ていると、後々修正が少なくて済むので、効率よく描き進めることが出来ます。
こちらのりんごを描く動画もご覧くださいませ。
・擦っている部分はどこか?
・上部の凹凸をどのように描いているか?
・底面の陰影はどのくらいの濃さで描いているか?
・最終的にリンゴの色をどのくらいの濃さで仕上げているか?
デッサンで立体感を表現する
デッサンを表現している3つの要素
デッサンは、“線”、“タッチ”、“調子”の3つの要素で表現をしています。この3つの表現のサンプルをご覧ください。
1:線の要素
線を使って、モチーフの輪郭を表現します。
線に強弱をつけるだけでも、遠近感なども表現できます。線だけで形を表現できます。
2:タッチの要素
タッチを使って対象物の面の形を描き、タッチを使って、立体感を表現します。
線の中身がどうなっているのか、立体を描き起こしてゆきます。タッチを重ねることで、強弱も表現できます。
3:調子の要素
調子を使って対象物の陰影を描き、立体感や空間を表現します。
3つの要素を使う事によって、対象物の立体感を表現します。
こする技法を試してみる
こする??と思われた方が沢山いらっしゃると思いますので、詳しく説明していきたいと思います。
※“こする”とは、写真のようにティッシュ、または布、指の腹などで、描いた絵の表面をこすることを言います。
例えば、立体的な丸いものを描く場合
①平面に塗っただけで表現
ただ、平面に塗っただけでは、当然ながら、立体感はでません。
②3つの要素で表現
では、先ほどの3つの要素を組み合わせてみると、いかがでしょうか?
塗っただけよりは、若干立体感がでているかもしれませんが、もう1歩ですね。
③3つの要素で表現+こする
②の円の輪郭をティッシュでこすりました。“輪郭が奥にいった”という雰囲気がわかりますでしょうか。
こすると一気に表現が変わりますね。
デッサンくん、かわいい(笑)
全体をこすってしまうと、こすらない場所との「差」がなくなってしまい、全体にぼやけた感じの絵になってしまうので注意が必要です。
リンゴを描く時の一番のポイントとは?
が、これができるとグンとうまく見えます!
参考画像のように、ガイド線を入れると、手前と奥との差も意識しやすく立体を感じやすいはずです。
この上面のヘタ周辺の表現がうまくいくかどうかで、下半分の立体がどうなっているのかを、見る側は形を推測しやすくなります。
この「見る側が」というのもポイントです。
人間の目には、良くも悪くも「勝手に推し量る」という機能があるため、上面に、このくらいの距離感があるということは、胴体部分の量感もこのくらい「あるはずだ」と、勝手に認識するのです。
なので、この仕組みをうまく活用し、よりリアリティがあるように<魅せる>方法があるのです。
「見たままを描く」と言いながら、「あるはずだと勝手に認識するように描く」というのは、だまし絵みたいな事を言うなぁ・・・と、違和感を感じた方、鋭いです!(笑)
突き詰めて考えていくと、私たちの目の前にあるモノは3次元の物体ですが、目の網膜に映る画像は2次元のものなのです。
この3次元が2次元になった時点で、かなりの情報が抜け落ちてしまうため、今度は、見る側が、2次元の画像を3次元に戻す過程で、脳は過去の経験や、物理法則についての前提知識をフル活用しながら、見ているのです。
手がかりを絵の中に仕掛けるだから「こう見えて欲しいな」という手がかりを、絵の中に仕掛けとして置いておくんですね。要するに「ぱっと見の印象」も大事ですよ。ということです。
こう書くとなんかテキトーな感じに聞こえますが・・・(笑)
絵は絵であり、本物ではありません
「見たまま」に描いたつもりでも「ぱっと見の印象」が合わないと、リアリティが出てきません。
言ってしまえば「だまし絵」なのです。
だからパッと見の印象が大事なんですね。
本物っぽく見えるために、一つ一つの「考え方」や「見かた」を身につけて行くのです。
そして技術をコツコツ積み上げることで、完成に近づくのです。
一つの事柄だけに執着せず総合的に考える力、バランス感覚を持つことが大事なんですね!
りんごのゴロンとした丸みを出すと同時に、上部の凹んだ部分の表現がうまくいくと、りんごらしさが表現できます。
少しのガイド線を入れることで、見え方が変わったのではないでしょうか?
モチーフをモノクロ写真で撮影してみる
いろいろな物を、モノクロ写真に撮ってみることで、どのくらいの濃さで描いたら良いのか、イメージ持ちやすくなりますので、初心者の方にはおすすめです。
デッサンは、現実世界のカラーを鉛筆の濃淡だけで表現します。
現実では真っ赤なリンゴも1色にしてみると、下の写真用のようになります。
ということは、濃淡の幅が広ければ広いほど、より忠実に表現ができるようになります。
バナナでも見てみましょう。
リンゴを描くと「鑑賞する力」もあがる
繰り返し描くことで、上達を確認できる
リンゴの描き方について解説してきましたが、うまく描けそうですか?
是非一度は、チャレンジしてみてくださいね。
そして「描きかた」だけでなく「観かた」も養うことができます。
「線 + タッチ + 調子」の、3つの要素を使う事によって対象物の立体の出しかたを学びましょう。
そして立体感の出しかたや「こする」の技法もマスターして、表現の幅を広げて行きましょう。
また、少し前の自分と比べられるように、作品は写真でも良いので保存しておくと、自分のモチベーションにもなるので、おすすめです^^
人物の描き方については、こちらの記事も参考にしてくださいませ。
⇒一目で違いがわかる!人物画のデッサンで大事な明暗のつけ方を解説します!
最後に
昨年、JTBグループ社様からビジネスマン向けのデッサン講座のご依頼いただき、なんと、100名様以上の方々にわずか1時間で「あっという間にリンゴがうまく描ける」という講座をさせていただきました。
たかがリンゴ、されどリンゴ・・・です!
これだけの変化が感じられると、描くのが楽しくなりますね。
講座の記事もUPをお楽しみに^^